でも、みなさんの言っていることがよくわからないの。
大学がロックアウトされて、入学金も授業料も払っているのに勉強ができないなんて、そんな理不尽な話はないと思うんだけど。
お金、返してくれないんですよね。どうしてみなさんがその要求をしないのか、まずそれがわからない。お金を返せとも言わず、授業が始まらない方がいいっていうのも、まるでわからない。四年間ずっと授業がなくって、レポートの提出だけで卒業するほうがいいっていう意味でしょうか。
定時制の高校には、高卒の肩書ほしさのために通っている人なんていません。みんな勉強がしたいから。人並みの学力を身につけたいから。もし授業がなくて、レポートの提出だけだなんて言われたら、みんなで文句をつけます。だって、それじゃ詐欺でしょうに。
もうひとつ、わからないことがあります。
ロックアウトをしている学生たちは、入学金も授業料も納めているんですよね。除籍になっていないんだから、お金は払っていることになります。だったら、何が気に入らなくたって、どんな主義主張があったって、勉強をしなければ損だと思うんだけど。
何もかもわからないことだらけ。
でも、結論はひとつきり。あんまり考えたくないけど、たぶん正解だと思う。
キャンパスを封鎖する学生も、それを幸いだとする学生も、入学金や授業料を自分で払ってない。おまけに、勉強もしたくはない。
……『降霊会の夜』浅田次郎著、p175-176
PR