今回は初めて第一部・第二部通しで観劇しました。午前11時スタートの午後8時終わりです。途中休憩がたくさんあるとはいえお尻が痛くなりました。
でも楽しかった。もっと精神的に苦しいかと思ったけど、一日人形浄瑠璃三昧というのは私にはとても楽しかった。幸せでした。自分がどんなに文楽好きだったのか、再確認出来ました。
演目は
「良弁杉由来(ろうべんすぎのゆらい)」
「鰯売恋曳網(いわしうりこいのひきあみ)」
「勢洲阿漕浦(せいしゅうあこぎがうら)」
「桂川連理柵(さくらがわれんりのしがらみ)」
一番良かったのが「桂川」で衝撃の面白さでした。もう一回見たいくらい。
一番良くなかったのは「鰯売」で駄作と言っても良いと思う。これを作った三島由紀夫はおそらくヨーロッパの御伽噺(豚飼いとお姫様の話とかお姫様とアヒル飼いの話とか)をアレンジしたんだろうけど、そのまま江戸時代に持っていくのは無理だと思います。時代考証的に無理がありすぎる。
「良弁杉」もイソップ童話みたいな話なんだけど、見ごたえのある話だった。当時の階級制度がきちんと盛り込まれていて、それが母の哀れさを増すのに一役買ってました。
私の好きな謡い手は豊竹英大夫と豊竹始大夫なのですが、この日の始大夫は冒頭があまりよくなかった気がする。年取ったのかなぁ……。
謡いは若い方が声に艶と張りがあっていいし、発音も明瞭で観劇の邪魔にならなくて良いです。年を召された方々は、どれだけ名声があろうとも声がしわがれて聞き取り辛い。年配者には長い謡を担当して欲しくなかった。長い謡については、ぜひとも後進に道を譲って欲しいです。聴いてるほうがしんどいです。
文楽で私がとても好きなところの1つが、黒子が謡う最初の「とざいと~~ざい~~」の処なんです。
黒子が「と~~~ざい~~~~~」と謡いながら舞台袖に消える、だんだん小さくなる声の余韻がいつまでも残る、それを消すかのように三味線が始まる。「ああ、夢の世界が始まるんだな」という気持ちにさせてくれるとても重要な役なんですが、一人だけぞんざいな人がいました。袖に消えてすぐに発声をやめた(ように聞こえた)黒子がいたんです。がっかりでした。
出来れば謡いと三味線の人を照らすスポットライトをもう少し落として欲しい(最近は最初から最後までギンギンに照らしてるのです)。黒子の声が遠ざかり、脇の灯明の明かりが取り残されたところで謡が始まるとか、演出最高だと思うんだけどな。
とにかく、今度から、チケットが取れるなら、1部2部通しで観ようと思った秋の夜でした。幸せだ~。
PR