竹書房ラブロマン文庫アンソロジー【蜜罠】が発売されて3日経ちました。
いつもは短編の載った本が発売されるたびに私の筆名でここにやってくる人がちらほらあるのですが、今回はとても少ないです。
「受けが悪かったのかな」と、今思っています。前回に出した話(人妻マグマ噴火)は(自分では)あまり出来が良くないように思っていたのに来た人は少なくなかった。
今回は自信があったのに来た人が少ない。
ベテランの人でも「これは自信作」と思っていて全然売れないということがあるらしいので、経験の浅い私がそういう現象を味わうのはおかしなことではないと思います。思います、が……。
ここで「官能」について思っていることなどを書きとめておきます。自分の中間報告みたいなものです。
編集や同業の方から良く言われたことは、「勃たせてナンボ」でした。あと「ポルノは大人の男のファンタジー、御伽噺」とも。
だから耳に快い話だけ書いて、勃起を妨げるような話は極力避ける(※)というのが鉄則だったのです。どんなものを極力避けるかと言うと、うんこやおしっことか生理とかインポとか臭マンとか怪我や事故や殺人の詳細描写とかです。
(※中にはこういう話でギンギンに勃起する人もいますがニッチな趣味は商業主義では後回しにされる運命にあるのだ)
私の書く話はそういう「耳に快い」枠組みからちょっと外れていることが多いです。
私は、セックスというのは人生と人生のぶつかり合いだと思います。だから私の書く話は生育歴とかコンプレックスを感じさせる場面が時折出てきます。美醜や金持ち貧乏のコンプレックスについてはテーマとして良く出てきますが、親に愛されなかったとか兄弟と比べられて劣ってるといつも言われてたとか、そういうちょっとアレなコンプレックスは従来の官能小説ではあまり出てきてないんじゃないかなと思います。そこらへんをあんまり丁寧に書くと読み手が萎えるからです。さじ加減が非常に難しいんだと思います。私が書いたものに対して「これじゃ勃起しない。こんなのは官能じゃない」とおっしゃる同業者の方もいるかもしれません。
物語のヒロインになるくらい素敵で恵まれた人妻が浮気する時、魅力に欠ける凡庸な男は絶対選ばないはずなんです。物語上であっても、もしそういう男を選んで身体を開いたとすれば、そこには「それ相応の"重い"理由」が必要だと思います。また、知的な女はそうそう簡単に罠にかかるわけがなく、そこには彼女の判断を誤らせる重大な理由がなければならないと思います。
中には誰でもいいから手当たりしだい寝たいという淫乱な人妻もいるそうです。しかし、男性諸氏は、実際そういう人から誘われた時、ほいほい付いて行って素敵な思い出を作れますか? 家庭のある男や家庭を持ちたい男だったら、まず病気をうつされることを考えてそういう女は敬遠するんじゃないかな。逆に、人妻で、行きずりの男とセックスする人間は、心の病か重いコンプレックスの持ち主か売春目的、じゃなければ単なるド変態か馬鹿だと思うけど。
安易な考えの人間同士のチャラいセックスが読みたい人は体験告白を読めばいいんじゃないかな? むしろあっちの方が割り切っててあっけらかんとして面白いよ、って思ってます。
官能小説ってなんなんでしょう?体験告白との違いは何? 語彙? ちょっぴりゴージャスなシチュエーションか否か?
何だろう変な言い方ですが自分が表現したいことは編集者から見たら多分ニッチ=マイナーなんですね。
だから自分はマイナーのまま段々先細りするか、マイナーからメジャーに転じる努力(一人ずつでもいいから熱狂的ファンを増やす努力)をするか、どちらかしか道は無いと思っています。
そんな感じ。
ところで今の【人妻これくしょん】の連載がもうすぐ終わり、電子書籍化する予定になってます。
自分も上記のことを悩みながら書いたせいか、主人公の成長譚ぽくなって通しで読むと面白いです。
決まったらここで告知しますので、是非御覧下さい。
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