「土に点1」で書いた事の出典をやっと探し出してきました。
結論から言えば、聞き取りした話を単に書いているだけで、古文書で裏付けをしたり学術的に意味を見出そうとしていたりするわけではありませんでした。「ハニ」と言う言葉は実際にあったのは間違いないですが、「」と「圡」を大昔から区別していたという論拠は書いてありませんでした。
誤解のないように該当部分をすべて転載致します。
※一部修正、一部の字が消えてしまう…土の上部にテンは土’と表記し直しました。本当はテンの向きが違います
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「苗字に生きるやまとことば」p166-167より(青春出版社)
第四十七話 土’野さん
土に ` (テン)が付いている。
土’野の苗字もある。これに点「、」がついたのは「土野とちがうんだヨ」と言っているわけ。
それならどう違うか。
土野はツチノとふつうよむ。しかし土’野さんは、ハノと読む。ハノの語源はハニノで、これを略した形とみられる。土(つち)といえばいろいろな土がある。泥(どろ)は、どろどろした水をふくんだもの、ツチはいっぱんにふつうの土壌で、特殊な色(赤、黒、茶など)もしていないもの。いわゆる土色で、ねばり気もなく、砂ほどでもないもの、ハニは、ねばり気のつよい、茶色や赤味をおびたもの(中には黒もあるが)で、器などにするものが多い。
土’野さんがハノとよませたのは、このハニの土を強調しているらしい。それでツチノとかドロノとか呼んでもらいたくないのだ。
すると ’(テン)はハニがハネ(跳ね)て、飛んでる形も見られおもしろい。
土の文字を苗字に用いる人はほかに、土’(つち)、土’井(つちい)、土’浦(てうら)、土’屋(つちや)、土’岐(とき)、土’公(どこう)、土’江(どえ)、土’田(ほどた)、土’佐(とさ)ほか十数氏ある。ところが、圡野(土’ではなくて圡)という人に、ぐうぜんお会いすることができた。おどろいて、
「なんとおよみするのですがか」
とお伺いすると、
「ヒジノです」
「ハノではないのですか」
「圡の '(テン)がすこし下の位置にあります。土’ではなくて圡です。これは水気がふくまれていて少し重いので圡にしました。ドロに近いハニです」と。
「お仕事は?」
「窯をやっております。祖は圡師(はじ)でした」と。
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※転載終わり。
それにしてもこの出版社のこの本は、開き(漢字を平仮名に開く事)が多すぎて逆に読みにくいです……。
参考)
「漢字林」土部
http://ksbookshelf.com/DW/Kanjirin/Kanjirin33.html
◎=土’