あとがき
私の研究の拠りどころは、材料科学である。先端的な開発に携わった時期もあったが、現在は主に、発掘資料や博物館資料など、いわゆる文化財を中心とする「歴史的な材料」を「材料科学」の最新の分析手法で解析することを専らとし、専門を、「歴史材料科学(archaeomaterials science)」と標榜している。これは、「何を使って、どうやって作られたか」を探ることにも繋がる「材料技術史」でもある。いわゆる「文系」の資料を「理系」の手法で読み解く、文理融合型の分野である。(中略)材料から見る歴史観とでもいおうか。
それは、史書や文書、絵巻などの文献資料からでは窺い知れない世界であろう。古来、モノ作る人々は、秘伝のレシピを細かく文字や記録に残さない。秘伝は、長い間、一子相伝、しかも口伝に限られた。「もの」言わぬ実資料だけに秘められた、モノ作る人々の「生々しい記録」を、蘇らせるのが私の役目であろうか。
中でも、「金・銀・銅」をめぐるデータの蓄積は豊富にある。その一部を紡いで編んだのが、本書である。
(「金・銀・銅の日本史」村上隆(りゅう)岩波新書)
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※まだ読んでる途中なのですが、この人の講演があったら聞きたいと思うので、備忘録的にこちらに書いておきます。村上隆氏は石見銀山資料館の名誉館長さん)
https://www.amazon.co.jp/dp/4004310857