■地獄絵図に出て来るような地獄の概念は、もともと神道にも仏教にも道教にも無かったそうです。それが出て来たのは神仏混合で陰陽道が混ざった頃だということです。「往生要集(985年)」が初出とのこと。
■その地獄絵図の中に血の池地獄と言うのがあるのは皆さんご存知と思います。
■あの血の池地獄というのは女性が出した月経血やお産の時流した血で出来ていると言うのはご存知でしたでしょうか? 私は知りませんでした。
■そもそも仏教に於いて女性(にょしょう)は生まれ落ちた事それ自体が罪なんだそうです。なぜなら女は毎月血で大地を汚すからです。お産のたびに血を流すからです。
■キーワードは偽経「血盆経」です。偽経とはニセという厳しい意味ではなく仮とか補助とかいう軽い意味だそうです。
■「血盆経」とは、女性が女性特有の出血のために、死後、血盆池(血の池)に堕ちる事を説く短文の仏教経典のことである。経諸本には多少の異同があるが、おおむね次のような内容からなっている。
『仏弟子の目連尊者が、血盆池地獄を見る。ここは、出産時の出血(および月経)で地神を穢し、また血の汚れを洗った川の水を人が知らずに汲み、茶を煎じて諸聖に奉り、不浄を及ぼしてしまう罪によって、女性だけが落ちる地獄があった。母の恩に報いるため、目連は獄王(あるいは仏)にこの地獄から逃れる方法を問う。当経は、十世紀以降に中国で民間仏教経典として成立したと言われている。
■血の池地獄に落ちた女人たちが救われるためには、「血盆経」を信じてこれを書写し、読経し、受持するならば、三世の母親はことごとく天に生まれて諸々の快楽と衣食を受け、自然に長生きが出来、浄土に往生することが出来るとある。
■仏教で救われるのは基本的には男子のみで、女はその原罪により地獄に落ちるというのが昔の仏教の教えであった。(釈迦をたぶらかすのも女だった)(釈迦の母は釈迦の追善供養により助かったらしい)
■現代の女性から見たら酷い女性差別(蔑視)かもしれないが、当時は地蔵盆の地獄絵図を見るのは女子供と決まっていた。いわば女子供の娯楽タイムでもあった。地獄絵図を見る地蔵盆などの「講」の中心はいつも女だった。自分たちが地獄に落ちないようにしっかり念仏唱えてくるからアンタ舅姑の面倒と畑と洗濯と掃除やっといて! みたいに大手を振って集会場に行ける楽しいひと時だったのではないかと講師の女性は仰ってました。そうかもな~とは思います。
あとがき
私の研究の拠りどころは、材料科学である。先端的な開発に携わった時期もあったが、現在は主に、発掘資料や博物館資料など、いわゆる文化財を中心とする「歴史的な材料」を「材料科学」の最新の分析手法で解析することを専らとし、専門を、「歴史材料科学(archaeomaterials science)」と標榜している。これは、「何を使って、どうやって作られたか」を探ることにも繋がる「材料技術史」でもある。いわゆる「文系」の資料を「理系」の手法で読み解く、文理融合型の分野である。(中略)材料から見る歴史観とでもいおうか。
それは、史書や文書、絵巻などの文献資料からでは窺い知れない世界であろう。古来、モノ作る人々は、秘伝のレシピを細かく文字や記録に残さない。秘伝は、長い間、一子相伝、しかも口伝に限られた。「もの」言わぬ実資料だけに秘められた、モノ作る人々の「生々しい記録」を、蘇らせるのが私の役目であろうか。
中でも、「金・銀・銅」をめぐるデータの蓄積は豊富にある。その一部を紡いで編んだのが、本書である。
(「金・銀・銅の日本史」村上隆(りゅう)岩波新書)
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※まだ読んでる途中なのですが、この人の講演があったら聞きたいと思うので、備忘録的にこちらに書いておきます。村上隆氏は石見銀山資料館の名誉館長さん)
https://www.amazon.co.jp/dp/4004310857