■あさひ刀剣さんが去る4月29日、芳林堂高田馬場店で開催した「刀剣講座」の参加レポを書いておきます。
■そもそもなぜ私があさひ刀剣の講座を推薦するかというところから書いておきましょう。
■初めて代々木の刀剣博物館に遊びに行ったときの違和感は鮮明に覚えております。「これって博物館と違うよね……」という不信感でいっぱいになって戻ってまいりました。
■展示物の説明がまず謎だった。ふわっとした謎の言葉が刀に添えられていてほかのことが頭に入って来ないんです。「にえって何だよ」「匂口ってなんだよ」「足ってなんだよ」「湯走りってどうやって見るんだよ。お湯を刀に流すのか?」etc.etc
■.それら謎の用語ひとつひとつに対する的確な説明文があったのかもしれませんが気づきませんでした。あったとしても刃を褒める表現に比べて熱量が異常に低くて、見落としたのかもしれません。
■日本刀を褒める用語の不可解さに驚き、同時に「ああこうやってずぶの素人をシャットアウトしてるのかねえ」と感じました。刃(やいば)がどう見えるかは主観であって客観ではないにもかかわらず、展示物の説明としてまかり通っている、と書いたら書きすぎでしょうか。
■でも「刃文がこう見えるようにならないとお前には刀の事は何一つわからないぞ」と、そういうことですよね?
■論理の明示ではなくて、感覚的な表現に徹する業界の姿はその後いくつか本を買って読んでもいまいち解消されず、放置状態となっておりました。
■そんな私の疑問を払拭してくれたのが「あさひ刀剣」さんなのです。「刀に対する個々の好悪の論評は理論の上にあるべきで、好悪を土台に論評するのは違う」とおっしゃっていましたが、よくわかります。「主観」と「客観」ですよね。「客観」で分類推察し、その上で「主観」的な推察があるべきということなのかなと、パズルのピースが嵌まった手ごたえを自分は感じました。。
■前置きはここまでにしておいて当日の様子ですが、初心者講座ということで年代別の刀の大まかな特徴についてを世情を交えて説明がありました。
■刀剣は昔は美術品ではなくて実用品であった、なので歴史の流れを踏まえた実用品としての解釈や分析がまず必要なのだという事が良く理解できました。一番面白かったのは、江戸期以前の日本人の平均身長(骨から推測出来ます)と江戸期になって肉食をやめてからの日本人の平均身長の話で、そういったところからも刀の長さの流行が変わるのではというお話でした。その発想は無かった! 明治の廃刀令が刀業界にどういう影響を及ぼしたか、など興味深いお話が満載でした。
■鉄は加工がとても難しく、ふいごのほんのちょっとした加減や熱した鉄の棒を水に入れるタイミングなどで台無しになってしまうことが良くあり、その辺の技術は見て盗むしかなかった・見て盗むにあたっては師匠の完全コピーをしなければ技が伝わらない、みたいなお話も興味深かったです。
■講座内で、日本刀に実際に触れて鑑賞方法や作法も教わります。時代ごとの違いや刀文の確認方法も教えてもらえます。コンパクトにまとまった冊子が付いてきます。
■講座の後、若い女性と話す機会がありました。彼女は彫金・アクセサリー関係の仕事をしており素材として鉄を扱う事があるのだそうです。「鉄という素材の扱いの難しさは重々承知しており、だからこそ何百年の間研いでも研いでも美しいままの日本刀の作成技術の素晴らしさが身に染みる」のだそうです。あさひ刀剣さんの啓蒙活動については常々チェックしておられたそうです。そうなんだ。知らなかった。小さな鉄のアクセサリーでも気泡やクラックが入ってしまうことが(他の素材に比べて)良くあるのか。なるほど。
■ちなみにあさひ刀剣の店主は父親の跡を継いで5年ほどですが、あさひ刀剣技術顧問の中原信夫さんという著名な刀剣学者さんの元で研鑽を重ねており、おそらく中原理論の継承者の一人と考えて良いんじゃないかなと思っております(私見です)。
■講座の会場には2万円もする中原信夫・私家版の「刀の鑑賞規範」の本がおいてありました。中原信夫先生の50年間の刀剣研究の集大成だそうです。この著書はあさひ刀剣においてありますのでご興味とお金のある方はぜひお買い求めください。残数わずかだそうです。注文はあさひ刀剣直接でも私経由でも受け付けます。
■書店側によれば次回の刀剣講座は秋葉原にて行うそうです。行って損はないので是非行ってみて、日本刀を手に取って教えてもらってください。
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